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高野山の宿坊、一乗院に宿泊しました。/2021年5月下旬泊

都会のど真ん中で煩悩を抱えながら生活している身としては、美しい自然と仏教に触れる穏やかな時間の必要であると、家族一同で高野山へ行くこととしました。

大阪からは日帰りで行ける和歌山県高野山。

しかし、せっかくですので宿泊をしようと言う事で、宿坊へ宿泊する事となりました。

今回のお宿は、一乗院宿坊。

公式サイトはこちらです。
高野山 別格本山 一乗院

宿名 一乗院
住所 〒648-0211 和歌山県伊都郡高野町高野山606
電話番号 0736-56-2214
その他 大浴場あり

アクセス


アクセス方法は、一乗院の公式ホームページに記載があります。

因みに、私達家族は、大阪から自家用車で参りました。
車は、お寺の門の前に駐車が出来、チェックアウト後の駐車と荷物預かりも可能だとの事でした。

観光名所の金剛峯寺にも近いです。

到着


玄関に到着すると、若いお坊様が出迎えてくださります。
スリッパに履き替え、お寺に入ります。

宿坊玄関から振り返る

まず目に入ったのが、立派な壺と生け花。
宿泊者の目を楽しませてくださいます。

 

玄関に入ると立派な生け花

 

まずこちらで宿坊の利用の仕方に関しご案内を受けます。

写真からは見えいないのですが、空海や高野山に関する書籍が並んだ小さな本棚があり、自由に借りる事が出来ました。

 

売店、お香などを売っています。

売店には、弘法大師、高野山に関する書籍、お菓子やお香が販売されていました。

一乗院オリジナルのお香が大変いい香りでおお薦めです。

因みに京都の「松栄堂」のお香です。

 

部屋

今回宿泊しましたのは、石楠花の間。
ホテルの様に客室がずらりと並んでいるのではなく、各部屋が離れ配置されていました。
自分の宿泊する部屋の位置は、きちんと把握しておきましょう。

こちらのお部屋は10畳一間です。

奥に洗面所とトイレがあります。

3人利用で、広さ的に晩に3人分の布団を敷くと丁度収まる感じの幅です。

因みに畳の目が細かくて、良い畳を使用されていると感じました。

部屋

部屋からは中庭を見下ろす事が出来ます。

「石楠花の間」と言うだけあって、毎年5月上旬には石楠花の花が満開で大変美しい眺めになるようです。

今年は少し早めに満開になったそうですが。

 

床の間のしつらえ

ところで、床の間の上に飾られている白い切絵、気になりませんか?
案内してくださったお坊様に尋ねたところ、「吉祥宝來」と呼ばれる高野山発祥の切絵だそうです。
高野山ではお米が採れない為、藁が無くしめ縄が作れず、その代わりに切絵を飾る事になったそうです。

弘法大師が中国の洛陽を訪れた際に「切り絵」を習得され、高野山を開いた後、冬の厳しい時期に弟子たちにその切り絵の手法を伝えたとの事です。

この絵柄は、「如意宝珠」と呼ばれるものです。

如意宝珠(にょいほうじゅ、梵: चिन्तामणि (チンターマニ)、 英: Cintāmaṇi)とは、仏教において霊験を表すとされる宝の珠のこと。サンスクリット語でチンターとは「思考」、マニは「珠」を指す言葉で、「意のままに願いをかなえる宝」と解釈できる。如意宝、如意珠、または宝珠(ほうじゅ、ほうしゅ)と呼ばれる。引用元:wikipedia

大乗院さんでは、他に今年の干支「丑」の切絵も飾られていました。

洗面所エリアも畳を利用されていましたが、床暖房が利用できるようになっていました。

お風呂はついていませんので、必ず大浴場を利用しましょう。

冬に来ていたら、ここで寝たいと思っていたかもしれません。

化粧水類はございませんので、忘れずに持参した方が良いです。
忘れた時には、少し離れた場所にファミリーマートがありますので、そちらで調達しましょう。

因みに、宿坊内にキリンの自販機はありましたので、水や珈琲、ジュース類は購入する事が出来ます。

食事

宿坊のお食事は精進料理。
しかしながら、大乗寺のお食事は美味しいと評判を聞いていましたので楽しみにしていました。

夕食

時間になるとお坊様が手早く夕食の準備をしてくださいます。

ん?瓶が3つあるのが気になりませんか?

宿坊ではアルコールは出されないと思っていたのですが、メニューに記載があったのには驚きました。

メニュー

普段ビールを頂かない私も、試してみました。

甘味とコクがあって、大変飲みやすく美味しく頂きました。

空海さんも、少量の飲酒は許してくださっていたみたいですね。
般若湯と言って、仏寺でのお酒を指す隠語の様です。

空海が、弟子や信徒への戒めを25カ条で示した遺言とされる『御遺告(ごゆいごう)』。その19条(以下現代語訳)では酒について、「仏教者にとっては大きな過を引き起こす」と厳に戒める一方、病気療養中の者が薬として飲むのであれば、「塩と酒は許される」と読める部分もある。記述には古来さまざまな解釈があるが、このように飲酒を部分的に許容したとする見方もある。引用元:産経新聞

お品書き

 

 

お膳

八寸の山椒、細く千切りにされた湯葉を食したのは初めてで、味は勿論食感を楽しめるものでした。

黄色い器に入った先付の胡桃は大変香ばしく、日頃おやつで胡桃を食べている身としては「胡桃がこんなに美味しかったとは!」と、嬉しい発見でした。

くみ上げ豆腐の器の「あしらい」と付けられているのは、お刺身を模したピンクの小さなお料理です。

多分これもお豆腐かな?

メニューに詳細が無いので分からないのですが、何だろう?とあてっこしながら食べるのも楽しいです。

天ぷら、にゅう麺、ナス田楽

茄子田楽は想像通りのしっかりとした味付け。

赤くて長い天ぷらは万願寺唐辛子です。珍しいですよね。

八寸を食べ勧めて行くとニンジンケーキが隠れていて、「一乗院」と書かれています。

にゅう麺の湯葉を取り除くと、とろろ昆布が乗っていました。
とろろ昆布好きとしては嬉しい驚き。
上には梅肉が乗っています。

デザート

随分、お腹がいっぱいになってきました。

ババロアは豆乳か豆腐を使っているのでしょうね。

残さずに感謝して間食しました。

夕食が終れば、若い僧侶の方がお片付けと布団を敷いてくださります。

「上げ膳据え膳」とはこの事です。

朝食

私達が朝の勤行に行っている間、朝食をセットしてくだっていました。
だいたい7:30頃。
昨晩、タップリ頂いたのに何故かお腹が空いています。

朝食もタップリです。

朝食お膳

 

お漬物の梅干しは、はちみつ漬けの様な気がします。
ラップがあれば、おにぎりにしたかった・・・。

感染症の影響なのか元々カフェ的なお店がないのか、小腹を落ち着かせるいい塩梅のお店が見当たらないので、おにぎり的なものは助かったはず。

グレープフルーツのゼリーは寒天を使用しているのでしょうが、ゼラチンを使用したかのようななめらかさ。恐らく葛を利用していると思われます。

あまり宿のお茶には期待しないのですが、なぜか朝食のお茶が期待以上の香りでした。
色はご覧の通り薄く、期待させない風貌なのですけど。

 

大浴場

大浴場

大浴場内の写真は撮影しておりません。

大変掃除の行き届いた、清潔感のある大浴場でした。

お湯は高野山の湧き水を利用しています。

浴場に置かれていたシャンプー類は「POLA」でした。

お水の入ったピッチャーと紙コップが置かれ、自由に頂く事ができます。

この日は女性客は、私達家族3名のみでしたので自由に入る事が出来たのですが。本来は時間帯を決めて入る事になっているそうです。

そして入浴は晩のみで、朝の入浴はできませんので必ず晩に入浴するようにしましょう。

入浴時間は午後4時から午後10時までです。

宿の趣

しつらえなど

一乗院には数多くの間があり、様々な調度品や美しい襖などがあり、目を楽しませてくれました。
その中でお気に入りの写真を少し掲載します。

「三鈷杵」とは、元々インドで日常に使用される音の鳴る蛇除けの様なものです。

空海さんが中国から帰国する船の中から、密教を広めるのにふさわしい地を示して欲しいと願い「三鈷杵」を海に投げれました。

その後、ふさわしい土地を模索し朝廷から高野山を譲り受けたのですが、高野山の松の木にその「三鈷杵」が引っかかっていたという伝説があります。

建具も素敵

 

お庭

庭園

過ごし方

写仏

写仏前

夕食までの時間に、写仏を部屋の中で行いました。

写仏の種類は「弥勒菩薩様」「弘法大師様」の二種類から選ぶ事ができました。描き甲斐があり美しいのは「弥勒菩薩」ですが、他の家族がそちらを選んだので、私は「お大師様」を描く事に。
見本の上から半紙を重ねて筆ペンでなぞるだけのものですが、けっこう難しいので「弘法大師様ん」を選んで正解でした。

写仏後

右側が私の作品ですが、途中で集中力が途切れ、弘法大師様の目じりに少しアイラインをいれたり、ミカンを描いたりしています。
心を落ち着かせるのに良い過ごし方と思います。

その他

他に写経、勤行の後に「阿字観」と呼ばれる瞑想もあります。

「阿字観」も参加したかったのですが、感染症の影響で現在は行われないとの事。
どうしても参加されたい方は、事態が落ち着いた頃に行くと良いでしょう。

リラックスウェア持参をお勧めします。

 

勤行

朝の6時30分から7時15分まで朝勤行をから本堂で行われます。
本堂の中は勿論撮影禁止。
そんな気にもならないほど、荘厳で結界が張られているような空間でした。
住職さん含む僧侶達の読経を聞きながら、私達もお参りし勤行に参加します。

尚、宿泊客には椅子が用意され、感染症対策なのか窓が少し開けられていますので、参加される場合は暖かい恰好で参加された方が良いと思います。

一通りの読経が終った後に、住職のお言葉がありりました。

真言宗の教えは、死んで仏になるのではなく、今の生活を楽しみ、活き活きと生きる努力を行う事で仏様になれる。

密教や宗教と聞くと何やら難しく感じますが、分かりやすく身近に感じるお知恵でした。

「今を大事に生きる、瞬間瞬間を大事に生きる」事、この世に生かせていただいている事を大切におもうからこその事です。

「勤行」が終ったあと、僧侶の皆様がお庭に向かって読経を行っていたのも大変印象的でした。

草木成仏(そうもくじょうぶつ)

仏語。心をもたない草木でも、仏性を具えていて成仏するということ。天台宗・真言宗で説く。引用元:goo辞書

 

注意点、感想など

標高800mの高野山の気温は、平地と比べ5度ほど低いようです。
朝の「勤行」は特に冷えますし、羽織もの(カーディガン、パーカー、ブルゾン、ストール類)を持参する事をお勧めします。
前述しましたが、化粧水等のアメニティは置いていませんので、持参するかコンビニ等で調達しましょう。
数珠を忘れずに。(忘れて困るものではないのですが、宿坊に行くという事なので)

平日に行きましたので、私達以外にあと2組しかいないと聞いていました。
その2組が男性おひとり様一人ずつだったのです。

感染症の影響がない時は、外国からのお客様も多く、多い時で一日50名ほどの宿泊客がいらっしゃったそうです。

大人の男性が平日に旅に出るのに、友人と連れ立ってというのも難しいでしょう。

そして、自分を顧みる旅。
それには宿坊が、ひとり旅がふさわしいのでしょう。

私も次回はひとりで訪れたいです。